hysysk:old

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月曜日, 12月 19, 2005

soundscape resume

サウンドスケープに興味を持っていた頃(今もありますが)
に作ったレジュメです.
鳥越けい子さんの「サウンドスケープ[その思想と実践]」とか
マリー=シェーファーの「世界の調律」あたりの超メジャー
どころを参考にwebの資料などを織り交ぜて.

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サウンドスケープ概論

サウンドスケープとは

sound[音]+scape[眺め]
カナダの作曲家マリー=シェーファーが考えだしたコンセプト
『世界の調律』
日本では鳥越けい子が有名
http://www.keitori.net/
高橋悠治が最初に紹介

日本サウンドスケープ協会
http://www.saj.gr.jp/index.html
サウンドバム
http://www.soundbum.org/

・西洋近代の音楽芸術制度の問い直し
・サウンドスケープ概念から環境を理解する
・サウンドスケープデザインの展開

騒音と楽音
コンサートホールの誕生による外と内の壁

マリー=シェーファー作品
『星の王女』ハートレイク,日の出の時間帯に上演
『月を授けられる狼』一年に一週間,共同生活をしながら作曲
衣装作り,食事もプロジェクトに含まれる
音楽作品→社会,環境的コンテクスト

近代芸術...自己完結した閉じられた自律的存在
環境芸術...作品及び芸術行為を通じて人々とその周囲の
環境とに積極的な,新たな関係を生み出そうとする

音の風景を聴く
体験的,実践的アプローチ
聴こえた音を書き出す,人工の音と自然の音を分類する,
音聴き歩きなどによって
「多様な聴き方の発見」「他者の理解」

分析的アプローチ
サウンド...認識・把握の単位となる個別の音
サウンドスケープ...個別の音が組み合わされた音環境全体

音を発生の際の様々な文脈から抜き取り,純粋に音響的な対象として
捉える→「音響体=サウンド・オブジェクト」
語源:オブジェソノール(仏)
音響学,音声学の領域で物理的特性を数量的に分析して
グラフに落とす,スペクトログラフで表す,など.

ある音をそれを含む環境の中で,あるいは環境全体の
コンテクストで捉える→「音事象=サウンド・イヴェント」

音をどのように表記するか,は音をどのように把握し理解するか
ということと表裏一体.→ソノグラフィー
ex.等音圧地図...等高線を環境音の音圧レベルに用いる.
他にはプロフィール地図,イベント地図等

音楽は本来,耳から耳へと伝えられる「口承/口頭文化」
「記譜法」を導入している音楽はひとにぎりで,いかに
パラメータを抽出しようとも実際の音を聴く場合の実感を
表すことはできない.とはいえやはり,伝承,分析,新たな音や
楽曲の計画に有効な方法である.

地と図
基調音...音楽用語で「主音」,視覚的知覚では「地」,
調性音楽での楽曲の調性にあたる.
「意識的に聴かれる必要はないが決して見逃せない音」
ex.海,川,林,アスファルトの靴音など

信号音...「図」として意識的に聴かれる全ての音
音響的な通信や警告のシステム
ex.汽笛,霧笛

視覚と同様,音の内容ではなく聞く人の意識との関係で
決定される

標識音...サウンドマーク,「ランドマーク(陸標)」に由来.
特定のサウンドスケープを「顕著に特徴づけ,その音響的生活に
独自性を与えるもの」,「その共同体の人々によって特に尊重
され,注意されるような特質をもった音」
聖ロザリー教会の鐘,九時の大砲など
「保存」の対象になりやすい.

産業革命以前以後
以前...呼び売り屋,大道音楽家,乞食,行商人の歌,夜警の歌
労働のリズムと人間の呼吸が一致していた.手や足の習性.

以後...平坦な線,持続の感覚がなく,超生物的
ドローン(東洋における瞑想,反知性的な麻酔薬)
ドプラー効果(産業革命後に目立つようになり,発見される)
何がドプラーの耳を引きつけたか?
列車かどうかは定かではないが,実験に使用されたのは有名である.

騒音は権力
工業国で聴力障害で真剣に考えられるようになったのは1970年頃.
何故これほどまでに時間がかかったか?
主観的印象が客観的根拠をもつか確認の手段がなかった.
デシベルが音圧レベルを明確に立証する手段として広まったのは
1928年.

大きな騒音は恐怖や畏敬を呼び起こす
ex.雷鳴,火山,嵐,教会の鐘,パイプオルガン
神から聖職者,産業家,放送業者,飛行家
検閲を受けずに最大の騒音を出せる権威をもっているということが
本質.より広い音響空間を支配できる→帝国主義的

電気革命
パッケージ化し蓄える技術の発見
元のコンテクストから切り離す
音分裂症(スキゾフォニア)

テープレコーダーで音響体を自由に切り貼り
マルチチャンネルシステムで音事象をシミュレート
音響空間の携帯化

ラジオの超現実的サウンドスケープ
クロスフェード,ダイレクトカット,ミュージックアンダー
めったに聞けない音響効果ー沈黙
音の壁...音鎮痛剤→ムーザック産業
起源はサティ「家具の音楽」
図を地へ.
ルイジ・ルッソロ「騒音の芸術」
図と地の反転
ケージがコンサートホールの扉を開き,
デュシャンが便器を展示.

ミュージック・コンクレートでいかなる環境音も使用可能に.
電子音楽の発展でサイレンや機械音の区別ができなくなる.
音楽と環境音の境界が曖昧に.

根源音,中心音
それによって他のあらゆる振動が測られる,中心となる音
全音階的,旋法的音楽においては,基礎音もしくは主音

電気時代においては,共振周波数
電灯,アンプ,発電機まで,倍音とともにあらゆる電気機器
の作動に伴って聞こえる
60ヘルツ...Bナチュナル
50ヘルツ...Gシャープ
最もリラックスした状態で自分の存在の中心から自然に湧き上がって
くるように感じられる音と歌うように,というとこの音になる.

スウェーデンのスクルーヴ
Gシャープを根音とする長三和音を形成し,通過する列車の
Fシャープ音によって,属七の和音へと転換する.
街がメロディーを奏でる(超素敵!)

電車の音とジャズ,ロックの類似

録音技術による作曲への影響
音楽には冗長性が必要
モーツァルトの主題の反復
シェーンベルクの非再帰的な形式の流行とレコードの
商業的成功と同時期

音楽が今日の大多数の人間にとってもはや精神のアンテナとして
機能せず,未来の衝撃に対する感覚的な鋲や安定装置として機能
している

関係性のデザイン
ある音が騒音であるか否かは,周囲の環境との関係性,その音を聴く
人々や社会との関係で決定される.

音環境デザイン
音に対して特に新たなものを付加しないゼロのデザイン,
不要な音を削除するマイナスのデザイン
ex.木の葉のざわめきを保全するために木を保全する

→「デザイン活動」そのものの意味の拡大
きっかけをあたえること

音の風景を生きる
コンサートホール内の音にのみ,美的な感性を働かせ,
その外側の音には充分な注意を払わなかったことが,
現代社会における音環境の荒廃を招いた,という主張.
建築内部と外部の関係性にも当てはまる.

特別新しいものが生まれてくるわけではないかもしれないが,
分断してきた過程で取り落としてきたものが何であったのかを
知ること,そしてそれらを再び新しい形で取り戻していくことが
できるだろう.

sonic city
http://www.viktoria.se/fal/projects/soniccity/